舞台は、終戦から6年が過ぎた日本の「上野」。
探偵の高城 秋五の元に、かつての上司である有島 一磨から一つの依頼が持ち込まれる。
--逗子の良家息女が失踪--娘の父親は、娘の捜索を警察官である有島 一磨に依頼する。これまでにも、有島 一磨から依頼を紹介されていた彼からすればなんてことのない依頼である・・・捜索する人物を除けば。
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捜索対象は上月 由良・・・、彼--高城 秋五--がかつて逢瀬を交わした娘。そして戦争と同時に別れを告げた相手。
依頼主が待つ逗子に到着すると、上月 由良の妹である上月 和菜から姉の捜索を懇願される。
だが、父親の上月 慶一郎は密かに高城 秋五に告げる・・・。
--「あの娘は、本当は死んでいるんですよ……」と。
その頃、上野で頻繁に発生する事件に警察は頭をかかえていた。
事件の発端は川から挙がった一人の少女の死体。少女はバラバラに切り刻まれた状態で発見される。
警察が事件の糸口をつかめぬまま犯行は連続して起き、死体を切り刻む手口は鮮やかに、そして常軌を逸していく。
それを指し示すかのように、以前よりも綺麗にバラバラに切断され、そして子宮が食いちぎられた状態で新しい死体が発見される・・・。
交差する2つの事件。戦争の跡が残る上野を舞台に、今、惨劇の幕が開く。
高城 秋五(たかしろ しゅうご)
本作の主人公。
終戦後に警察官となるが、とある事件をきっかけに退職。警察を退職後は、上野にある遊郭「雪白」に居候をして探偵業を営んでいる。
あまり親しくない人間に対しては憮然とした態度をとるが、親しい人間には笑みをみせるなど優しい一面をもっている。また、正義感が強いために、必要以上に事件の被害者や依頼者に感情移入してしまう場面もみられ、それが警察を辞めた一つの要因となっている。
物語序盤にて、警察官時代の上司である有島警部に持ち込まれた依頼を受けて、かつて逢瀬を交わした上月 由良の捜索を複雑な感情を抱えたまま開始するが・・・。
上月 由良(こうづき ゆら)
上月 慶一郎の長女であり、上月 和菜の双子の姉。
戦前、逗子で偶然であった高城 秋五と出会い恋に落ちるが、まもなく戦争が始まり、高城 秋五に赤紙(出兵命令書)が届いたため、否応無く二人は別れてしまう。
目が見えず、とある理由から周囲の人間や、家族である父にさえ疎まれていたため、人を信じることができないでいたが、偶然出会った高城 秋五はそんな自分に分け隔てなく接してきったことから、彼を信頼し、そして愛するようになる。
高城 秋五と別れて数年後、謎の失踪を遂げることにより、複雑に絡まった愛憎入り乱れる事件の引き金を引くことになる。
上月 和菜(こうづき かずな)
上月 慶一郎の次女であり、上月 由良の双子の妹。
数年前、父に反発して、父方の実家である逗子から上野の実家へ移り住み、現在は上野の舞台で活躍している演劇女優。
誰にでも分け隔てなく接し、どのような時にも明るさを絶やさないため、初対面の人間であれ直ぐに打ち解けることができる。
母方の実家から戻ってきた際、姉である上月 由良が失踪していたことを知り、父である上月 慶一郎に姉を探すよう嘆願する。
尚、貧乳であることを気にしている。
初音(はつね)
遊郭「雪白」で下働きをしている少女。
戦争で身寄りをなくしたところを、雪白の女将である雨雀に引き取られた。雪白では食膳の運びや、高城 秋五の世話を主に行っている。
おとなしい儚げな容姿をしているが、芯は強く、しっかりとした性格をしている。床につまづいて、運んでいる食膳を落とすなど少々ぬけた所があり、それを乙羽に咎められる場面もみられている。
自分に優しくしてくれる高城 秋五に恋心を抱いているが、口にだせずにいる。
高城 七七(たかしろ なな)
高城 秋五の妹。上野にある私立華陽学園に通う女学生。
知識は広く思慮深いが、自分が興味を持つことには周囲の制止を無視して没頭してしまうため、高城 秋五の悩みの種となっている。また、兄である高城 秋五に愛情を抱いており、兄の愛情を得るためならば手段をいとわない節がある。
上野の連続怪死事件に興味をもち、兄の制止も聞かずに捜査を開始する。
蒼木 冬史(あおき とうじ)
上野界隈を拠点とする組織「死の腕」の用心棒であり、幹部を勤めている女性。
高城 秋五が警察に勤めていた時に、ふとした縁から知り合う。以後、高城 秋五と親交を重ね、高城 秋五が受ける依頼に力を貸している。
冷徹な一面を持ちながら、母性にあふれた女性であり、高城 秋五には女性らしい一面をみせることもある。また、用心棒という仕事には似つかず、家事を得意としている。
上月 由良の捜索の協力を高城 秋五に頼まれ、捜索に手を貸すことになる。
雨雀(うじゃく)
遊郭「雪白」の女将。
元々は吉原の遊女であったが、現在は引退して「雪白」の経営を行っている。また、「雪白」に来る客から得られる情報を利用して、情報屋も営んでいる。
仕事に対しては厳しい姿勢をみせるものの面倒見はいいため、店で働いている女性達からは慕われている。
後に、上野連続殺人事件で「雪白」の女性が殺害されたことにより、高城 秋五に犯人の捜索を依頼する。
凛(りん)
遊郭「雪白」で働く女性。
娼婦という暗い身の上を感じさせない明るさをもつ女性。高城 秋五に冗談交じりで好意を伝えてはいるが、肝心の高城 秋五には本気ととられていないため、二人の仲は進展しない。
自分が娼婦である身の上から、高城 秋五に本気で思いを伝えることができないでいるが・・・。
綾崎 楼子(あやさき たかこ)
高城 七七を親友と慕い、彼女と同じく私立華陽学園に通う良家の女学生。
幼い頃、当時警察官だった高城 秋五と出会っており、それ以来ずっと恋心を抱いている。
良家のお嬢様である為か、世間知らずで、おっとりとした面がみられるが、思い切った言動をとることもある。
後に、高城 七七を通して高城 秋五との再会をはたす。
祠草 時子(しぐさ ときこ)
宗教団体・千里教の幹部。
千里教の幹部として、上野で千里教の布教活動や、顔を出すことができない教主に代わり、千里教への入信希望者との謁見を行っている。
無口で物静か、不思議な雰囲気の女性であり何を考えているかを窺い知ることは出来ない。
上野殺人事件で容疑者として、一度は警察に拘留されるが・・・。
乙羽(おとは)
遊郭「雪白」で働く女性。
戦時中、過ちを犯して路頭に迷っていた所を雨雀にひろわれる。「雪白」では仕事に厳しく、下働きで働いてる初音などには辛くあったている。
同年代であるためか、同じく「雪白」で働く凛とは仲が良く、一緒に買い物などに出かけている。
最近では、自分の妹分である芹と小雪が、妙な宗教にはまりだしたことを心配している。
小雪/芹(こゆき/せり)
遊郭「雪白」で働く双子の少女。
「雪白」で働く乙羽の妹分となるが、雨雀曰く、あまり仕事には向いていないようである。
姉の小雪は強気、妹の芹は内向的な性格で、親しくない人間には敵意をむき出しにすることもある。
最近は妙な宗教にはまりだし、「雪白」での仕事を怠る事も。
深水 薫(ふかみず かおる)
私立華陽学園内の教師。
カトリック系の学園のため、シスターの衣装を身に着けている。信心深いシスターであり口調は丁寧である。
お嬢様が通う学校であるためか、生徒の送り迎えに馬車が用意されており、彼女が御者をする場合もある。
有島 一磨(ありしま かずま)
警視庁の刑事であり、階級は警部。
高城 秋五とは戦時中からの付き合いであり、警察官時代の上司でもあった。高城 秋五の能力を高くかっており、高城 秋五が警察を辞めてからも仕事の世話をしている。
常に冷静さを忘れず、事件の加害者に対しても情をみせる一面からも、彼の為人がうかがえる。
彼が、上月 慶一郎からの依頼を高城 秋五に紹介した事により、高城 秋五は舞台へと足を踏み入れることになる。
赤尾 生馬(あかお いくま)
上月 和菜の所属する劇団の美術監督。
今、上野で開催される予定の舞台で、美術監督を務める新進気鋭の芸術家。常に柔和な笑みを浮かべる優男であり、物腰の柔らかな口調で話す。
上月 和菜に対して好意を抱いているような言動をするが・・・。
八木沼 了一(やぎぬま りょういち)
上野署の刑事であり、有島 一磨の部下にあたる男。
高城 秋五が警察を辞めると、入れ替わるように刑事課に配属されてくる。警察署の人間から、高城 秋五の退職の理由を聞いている為か、はたまた高城 秋五と自分とを比べられていた為か、高城 秋五には良い感情を抱いていない。
性格は冷酷、そして利己的であり、自分の出世のためならばどのような手段もいとわない。捜査に感情をはさまず、出世のことだけを考えていることから、ある意味では警察らしい警察ともいえる。
上野連続殺人事件が発生してからは、捜査に奔走している。